第4章  「 Northern Lights 」


  カナダの北部を扇状に横断するオーロラベルトは、
  時期によりその幅を膨らます。
  寒冷前線と低気圧の関係で、バンフはもちろん、カナダ中南部の
  サスカトゥ-ンや、ケベックの北部でも見れるという。
  ここチャチルは、まさにオーロラベルトの真下に位置する。
  平地の中にあるイエローナイフやホワイトホースと違い、
  ハドソン湾を渡る北極海からの風によって、空気中のゴミや
  チリが常に流されて、異常なまでに視界がいい。
  そんな所で見るオーロラは、その北風にそよぐ光のカーテンが
  玉虫色に輝き、しかも動きが速く、カメラの露出時間が長いと
  ただの光のかたまりにしか写らない。
  9月の夜の気温は、それほど冷えてはいないので、
  撮影中は、快適だった。シロクマの脅威はぬぐえなかったけど。
  でも、そんな緊張感を全身に覚えながら過ごす夜って、とても
  充実した気分だ。自分が本当の自然の中に存在している、生きているっ
  っという気持ちが湧いてくる。もし、シロクマもいない、コヨーテもいない
  安全なタンドラだったら、むしろ、なんと物足りないことだろう。

  夜は静かに、そしてものすごく壮大に更けていった。

 

   オリオンにかかるオーロラは、彼がひるがえすマントのように
   風になびく。(9月12日撮影 50ミリ 絞り開放 露出15秒)

 

 天空から、しし座の三角を矢のように刺さる光の剣は、そのままハドソン湾に
 突き刺さっていた。ちょうど剣の柄の部分に宝石がちりばめてある
 ように、昴(プレアディス星団)が見える。

 

 下方に、平な面をした岩が見えるだろうか。
 今から約2万年前に終わった最後の氷河期以来、
 北米を包んでいた氷河は、ここを通ってハドソン湾に流れていったという。
 氷河は、長い時間をかけて、岩の表面を平らに削りながら移動した。
 その時代の夜も、現代のこの夜も、オーロラは何事もなく星空を漂っているのだろう。

 

 頭上近くに出たオーロラは、なにかを訴えてくるように
 はげしく動く。さらに気温が下がれば色彩の深さはもっと
 増すらしい。

 

 最終日に出たオーロラ。この夜、初めて南の空に出た。
 しかも、今までにない強さだった。
 後に、ウイニペグからVIAで来た人から、車窓からでも見えたと聞いた。
 赤いオーロラは滅多に見れないらしい。

 

 これもチャチル最後の夜に、宿泊していたB&Bのすぐ裏手にて。

 撮影は、天候の具合で3晩かけて、50枚ほど撮ったが、
 初めての撮影だったし、同じ場面を露出時間を変えて何枚か撮ったので、
 実際に使える写真は20枚もいかない。でも何枚かは、
 大きく引き伸ばしてみるつもり。

  




                        つづく

 
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